れんがギャラリー/カフェー  旧鎌田志ちや
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concept

 この建築は大正十三年に質屋として建てられたと伝えられており、既に築八十年以上の年月が経っています。大正末期の札幌は人口が約一万五千人。市街地が屯田兵村の面影残る山鼻町に拡がり始めた頃です。大正十五年には「国産振興博覧会」が開催されるなど、欧米文化へのあこがれや自由主義的風潮に後押しされ、急速に“文化生活”が庶民に広がりました。そのような時代背景の中、質屋の必要性も増したのではないでしょうか。

 私たちは空き家となったこの建物を偶然知り、そこに刻みこまれた時間の積層に魅了されました。そしてどうしても再生したいという思いを抱きました。露わになった地層、ロータリー車に削られた積雪の断面、何度も重ね塗りされて剥がれたペンキ、大木の年輪。積み重なったものの姿は常に美しいと思います。八十年間溜まった埃さえ愛おしく感じます。そこには人の記憶、街の記憶がこめられています。しかしその記憶は単に過去へのノスタルジーではなく、何か未来へつながる明日の記憶だと思います。再生されたこの空間が地域の人々の交流の場となり、山鼻の活性に役立つように努力することで、また新しい時間の堆積が始まってほしいと考えています。